株式会社モビーディック 代表取締役社長 保田守ブログ

(株)モビーディック代表として、企業理念や物づくりに対する情熱など、ブログ形式でお届けします。

Vol.10「石巻専修大学との取り組みver.5」

それでは、どこに、どれだけのゆとりを配分したらよいでしょうか?人間の体がいつも同じ姿勢をしていたなら割と簡単です。例えば直立姿勢を原型とするならば、直立した人に布なり材料を当てて、貼り付ければその姿勢にあったゆとりのないスーツが出来ます、つまり、緩くも無く、きつくも無い、ストレスの無いスーツに仕上がるはずです、これを立体裁断といっています。ところが実際には、人はじっと直立だけしているわけではありません。身体を動かします。ですから次は動かす部分に、その運動量に見合ったゆとりを持たせる必要があります。それでは、どこにどれだけのゆとりを持たせればよいのだろうか?それを知るには人体の構造を知らなければなりません、それは解剖学です。それと、もうひとつは、スポーツごとに運動の種類や量が違います、つまりダイビングとサーフィンでは動かす部位とその量が違います。サーフィンの場合はパドリングをするので、大きく腕や肩を回しますが、ダイビングの場合は、むしろ水中で泳ぎますから、脚の動きが大きくなります。運動量の多い部位には、ゆとり量を多く配分します、するとそこに水が溜まるリスクが増えるので保温性の低下を招きます。ですから用途に応じて最適なゆとりを配分するためには、そのスポーツのことをよく知っていなければなりません。

それに加えて、それぞれの用途に応じたニュートラルポジションを決めなければなりません。ニュートラルポジションとは、謂わば原型のことです。例えば、ダイビングの場合の活動と言うのは着替えから始まって、移動、水に入る、水中で泳ぐ、水から上がる、移動、着替えなどの一連の動きがあります。もしスーツが直立姿勢を原型としたゆとりの無いものであればそれぞれの動きの際にストレスが掛かります。そのストレスを調べることで、もっともストレスが少ないのは、どういった姿勢を原型として使った場合かということが分かります。この姿勢のことを私たちはニュートラルポジションと言っております。

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これは、ダイビングの場合のニュートラルポジションです。直立よりもやや膝が曲がったり前傾したり腕が少し上がったりしています。

そして、人体の構造についても知っておかなければなりません、それが解剖学に基づく知識になります。まずは骨格についてです。人体の可動部位とその範囲を知ることが出来ます。例えば先ほどのダイビングのニュートラルポジションで言えば、やや膝が曲がっている、やや腰が曲がっていると言う特徴がありましたが、それでは厳密にその屈曲する膝とは、あるいは腰とは厳密にどこを指すのでしょうか?膝であれば俗に言う膝頭(膝蓋骨)から曲がると思いがちですが実際は膝頭の下の頚骨点という場所です、また腰は、腰と言うぐらいですから骨盤の上辺りが曲がると思いがちですが厳密には股関節ですね。そのように人体の可動部分を特定してパターンと言いますが型紙上に反映させます。

また筋肉ですが筋肉は伸びたり縮んだりします、一方が伸びればもう一方は縮みます。ですから、筋肉は互いに拮抗関係にあると言います。一番人にとって疲れない、つまりストレスの無い姿勢と言うのは、すべての筋肉が拮抗関係にあってバランスが取れている状態といえます、つまりそれがニュートラルポジションと言うことになりますが、この絵にありますように、まるで胎児の姿勢がそれに当たると言われております。

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