株式会社モビーディック 代表取締役社長 保田守ブログ

(株)モビーディック代表として、企業理念や物づくりに対する情熱など、ブログ形式でお届けします。

Vol.9「石巻専修大学との取り組みver.4」

競合メーカーは100社ほどありますが、現在当社の国内販売シェアは20%以上です。

一つ目の製造技術について、もう少し詳しくご説明したいと思います。ウエットスーツに求められる要件は、まず保温性、保護、運動性そしてデザイン性などがあります。

俗に、ウエットスーツと言っていますが、実はウエットスーツドライスーツの2種類に大別されます。ウエットスーツは体が濡れるからウエットスーツと言い、ドライスーツは体が濡れませんからドライスーツと言います。ウエットスーツの構造は基本的に普通の服と同じでして、素材が発泡ネオプレンゴムと言う断熱素材を使用しているのが違います。その素材を使って、身体にぴったりフィットしたスーツを着ることで、スーツ内への水の浸入を最小限にし、寒さを防ぎます。いくら断熱素材を使用しても、ユルユルに作ってはスーツと体の間で水が出たり入ったりしますから、保温効果は得られません。ぴったり作ることで一旦入った水が、体温で温められて保温効果が働きます。但し、ぴったりといっても、ぴったりすぎては窮屈で体が動きづらくなり血行も悪くなったりし、よくありません。ですから良いウエットスーツと言うのは、身体にぴったりして動き易いのが良いのです。そのために一人一人の体のサイズに合わせて作るオーダーメイドのウエットがベストです。当社はこのオーダーメイドのウエットスーツを作る技術では、どこにも負けないと自負しています。例えば背広の場合ですと、直立したときにフィットしておればスッキリとかっこよく見えるのですが、体操したり走ったりするときには、とても動きづらくて機能的ではありません。ウエットスーツは、各マリンスポーツそれぞれの色々な動きに追随することが要求されます。ですから直立しているときに、ぴったりフィットしていて尚且つ、腕を上げたり回したり、腰を曲げたり伸ばしたりした時にも無理なく運動ができるように作らなければならない、これが難しいのです。私達は解剖学に基づいた型紙作りを研究しその技術を開発しました。これをA.C.T.アクトという名前でよんでおります。Anatomical Cutting Technologyの略です、直訳すれば解剖学的裁断技術でしょうか。基本的には保温性と運動性の両立を目指します。開発の過程においてはウエットスーツ業界では世界で初めて3D Body Line Scannerを導入しました。メジャーによる手採寸ではなくレーザー光線による3次元採寸を行なって人体形状の研究をしました。スキャナーで計測した3次元の人体形状に運動性という要素を加えて型紙を作りますので、ACTは別名4D―FITTと呼んでおります。またその4Dの要素も例えばダイビングとサーフィンでは求められる運動の場所と量が違いますので、それぞれの用途に応じた運動量を加味し、最適なゆとり量を配分してウエットスーツを作ります。これは理論に加えて長年の試行錯誤から得られたノウハウというものが大きいです。

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Vol.8「石巻専修大学との取り組みver.3」

ちなみに当社の経営理念は、「私達は新しい生活文化の創造を通して社会に貢献します」というものです。そしてスローガンは「品質は私たちの誇りです」と言うものです。

新しいモノを作る喜び、創造の喜びを基本にして、そこで働く社員が、生きがいを感じられるような会社にしたい、他所さんと同じモノを同じように作るだけでは自分達が作る意味が無い、自分達にしか出来ないことを目指そう、ただし自分よがりであってはならない、結果としてお客様に喜んでいただく、そして社会に貢献できるもので無ければならない。と言う意味です。

ですので、世界で自分達の製品が売れると言うことは自分達の製品なり、サービスが認められたと言う証であり、売れなければ、まだまだ修行が足りないと言う目安になります。我々は我々の製品が社会のお役に立つのだという確信を得たくて色々な市場に挑戦しています。国内の市場だけを見ていては海外では勝てません、海外の競合メーカーも強敵揃いですので、なかなか勝てませんが、あきらめずに挑戦を続けていると言ったところです。

それでは私たちの強みは何かと言いますと、

大きくは三つあると考えています。

まずは、長年築き上げてきたウエットスーツの製造技術です。ウエットスーツと言うものは体の保温、保護が目的です、そのためには体のサイズにぴったりフィットしたオーダーメイドのスーツが理想的です。当社ではオーダーメイドのウエットスーツをずっと作り続けていてその技術を育ててきました。当社では勤続が20年、30年という方が沢山いますがこういう方達は当社の大きな財産であり強みです。またレジャー用の場合は保温や保護だけではなくデザイン性が求められます。社内のデザイナーが世界に通用するデザインを作っています。

二つ目は、新しい市場を開拓するとか新しい製品を開発するとかに挑戦するチャレンジスピリッツがあること。

三つ目は、国内トップのマーケットシェアです。

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Vol.7「石巻専修大学との取り組みver.2」

個人的な話になりますが、創業時私は中学生でありましたが、その後皆さんと同じ大学生の時に、その後の進路を決めたと言っても良いような経験をしました。それは、マッコウ鯨と一緒に潜ったことでした。これがその時の写真であります。英国人の鯨の研究者に頼まれて、一緒に捕鯨船に乗り込み、鯨の生態調査のために水中写真を撮ったのです。それまでは誰もマッコウ鯨の水中での姿を見たことが無かったので、我々の写真はおそらく世界で初めてのものだったと思います。この写真はイギリスの雑誌に掲載された時のものです。このときに鯨の大きさと言いますか、自然の大きさに大変感動いたしました。そしてこういったことに関われる仕事ならやってみたいなと思い、大学卒業後に、この業界に飛び込んだのです。そうして、その後、社名も鯨に関係のある名前と言うことでモビーディックと名づけたのです。モビーディックとはアメリカのメルヴィルが書いた小説で日本名が「白鯨」です。

学生時代の感動は、人のその後の一生を左右することがあると言う意味では、皆さんも学生時代には大いに色々なことにチャレンジして感動体験をしていただきたいと思います。

ウエットスーツと言いましても、いろいろな種類や用途があります。私どもでは次のような各種の製品を作っております。

*レジャーダイビング用のウエットスーツ  

ブランド名「MOBBY’S」http://bit.ly/2gwwfZV

 

*サーフィン用のウエットスーツ

ブランド名「O’NEILL」1952年創業http://bit.ly/2Q2DzsS

 

*ウオータースポーツ(ジェットスキー、ヨット、ラフティング、トライアスロン

ブランド名「MOBBY’S」 http://bit.ly/2Q3Tozl

 

*フィッシングリアス

ブランド名「ウエーダー」http://bit.ly/2Q2z9lR

 

*プロ用スーツ(海上保安庁自衛隊、消防、警察、プロダイバー、漁業用など)  

ブランド名「X-MOBBY’S」または特注 http://bit.ly/2Q0wgSl

 

*アクセサリー  http://bit.ly/2Q0ArOb

  端切れ活用 震災直後に当大学の山崎先生のご提案とご尽力によって、仮設住宅にお住まいで仕事を失った方々に端切れ活用のアクセサリーの製作を内職と言うかたちでお願いすることで少しでも復興のお役に立てればという取り組みをさせてもらいました。現在は関連会社の(有)ファンクリエーションが引き継いでおります。

海外販売の取り組みですが、現在はつぎの国・地域に製品を販売しております。

 

*USA  現地法人

*ドイツ 代理店

*イタリー 代理店

*アジアではタイ  タイの若者向けのテレビ番組に協賛をしまして人気タレントさんたちに着てもらったダイビング番組。

*台湾 代理店が行なった販売店さんたちを集めたディーラーミーティング ダイビング番組によりダイビングが盛ん、そのメインキャラクターさんと中国・台湾で一番有名な水中写真

*韓国 展示会  ライセンス契約

*香港・中国

展示会、代理店など、これから拡大

その他も順次拡大予定

 

何故海外なのか?

日本のマーケットは小さく成熟市場であり拡張が望めない。海外市場に参入しなければならないという現実がありますが、メーカーの理想としては、良いモノを作りたい、作る以上はベストなモノを作りたい、当然、日本だけではなく世界でベストになりたい、世界で勝負したい。

と言う一種の夢が海外進出の理由です。

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Vol.6「石巻専修大学との取り組みver.1」

2017年6月21日でのインタビュー手記

株式会社モビーディック「小さなトップメーカー」として、只今、杉田先生からご紹介をいただきました株式会社モビーディックの保田でございます。今日は、この石巻の地を拠点とし、小さいながらも世界に向け発信している企業があることを知っていただきたくやってまいりました。

 

400年前に支倉常長をはじめとする遣欧使節団がサンファンバウティスタ号で欧州に向けて出帆したのはここ石巻です。また私達が子供の頃は石巻から数多くの漁船が世界中の漁場を目指して遠洋漁業が大変な賑わいでした。昔は交通手段としては陸路より海路が中心でしたから、そのようにここ石巻は船で海外を目指す人が沢山いた土地柄と言えるのだと思います。

現在私どもの会社は此処から車で5分ほどのところにありまして、ウエットスーツというニッチ業界ではありますが、国内最大手というポジションにあります。また狭い業界なので国内だけでは限界があるので、海外へもアメリカ、ヨーロッパやアジアなどに自社ブランドで、かつ高品質を売り物に販売をしております。

会社の創業は1963年ですから来年で55周年を迎えます。

当初は創業者である、私の父親が東北地方では、初めてのダイビングショップとして開業しました。当時はスキューバダイビングが開発されて間もない頃であり、また「獲る漁業から育てる漁業へ」と言う時期であり、漁業者にとっても潜水技術の習得が必要とされました。そして石巻牡鹿半島三陸海岸を擁して当時から遠洋漁業だけではなく日本有数の沿岸漁業の基地であり、また捕鯨の基地でもありましたから他の地域に比べても潜水の需要があったわけです。ウエットスーツは一般的にマリンスポーツウエアとして知られていますので、時々何故石巻ウエットスーツなのか?という質問をされることがあります。つまり何故マリンスポーツが盛んな湘南や沖縄ではないのかと言うことなのですが、当地は、今申し上げたように漁業がとても盛んであるので潜水の必要性が高いと言うこと、加えて全国的にも海水温が低いところであるために、保温性よりの高いウエットスーツのニーズがあるからなのです。水温の高いところならウエットスーツは無くても良いかもしれませんが、水温が低いことで、より保温性の高い、つまりより良いウエットスーツが求められると言うことは、当社にとっては石巻で仕事をする上でメリットがありました。なので当社の最初の顧客は、地元の漁師さんたち向けのウエットスーツから作り始めました。それがきっかけです。

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Vol.5「経営基本方針」

経営基本方針

① 社員

創造的な、高品質な製品やサービスを通して、お客様に満足していただけることで、社員がやりがい・働き甲斐、誇りを感じられる会社にする。社員とその家族の幸福を第一に考え物心両面にわたって働きがいのある会社作りを目指します。すべての社員は独立した個人として尊重され、その尊厳と価値が認められなければなりません。すべての社員に対し、安心、安全、公正な職場環境を提供し、公正な評価と対価を支払います。すべての社員の成長を心から願い、能力のある社員には雇用、能力開発及び昇進の機会を平等に提供します。社員による会社への提案、苦情が自由に出来る環境を作ります。

② お客様

社員のやりがいには、その必要条件として顧客満足があります。お客様のためにならない会社に社員満足は無く存在価値もありません。お客様の満足に貢献できる会社を目指します。

③ 地域社会

我々が生活し、働いている地域社会に貢献します。有益な社会事業及び福祉に貢献し、適切な納税をします。会社の施設を常に良好な状態に保ち環境と資源の保護に努めます。

④ 株主

株主様に対して正当な報酬を提供する責任があります。企業価値を高め、健全な利益を生まなければならない。研究開発を継続し、革新的な新製品を開発し、新しい設備を購入し、失敗を補償し、また逆境に備えて蓄積を行わなければならない。これらの原則が実行されて株主様には正当な報酬を提供します。

2018年度基本方針

取締役管理部長 保田智章

「持続的成長へ向けて、高い付加価値で新たな顧客満足を創造する」

一代で世界的な企業に成長したアップル社の創業者、故会長スティーブ・ジョブズ氏の生前に遺した言葉、『ライバルが、彼女に10本の薔薇の花を贈った。あなたは15本の薔薇を贈るべきと考えるかもしれない。しかしそれは、そう思った時点で、あなたの負けだよ。彼女が望むことを見極めるのが肝心なことだよ。』を教訓に、お客様が望むモノを作り提供するだけでなく、そのモノによる新たなライフスタイルの提案、モノからコトへ、即ち新たな満足や市場の創造が出来る企業を目指します。

そのためには、当社が持続的に成長し続ける必要があります。企業の成長に最も重要な要素である従業員には、個人を尊重し、安心、安全、公正な職場環境を提供し、適正な評価と対価を支払います。特に新しい創造に係る能力が開花し易い環境を目指すと共に、すべての従業員に能力を拡げる可能性があることを示します。また、適切な設備投資を行い、外部学術機関等との連携を積極的に行い、先進技術で創造的且つ高生産性の両立を目指します。

その結果で得られる売上、利益によって従業員、株主様、仕入先様、そして我々が住み働いている地域社会の繁栄に貢献します。

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Vol.4「我が社の経営理念」

経営理念

「私たちは新しい生活文化の創造を通して社会に貢献します」

 

スローガン

「品質は私たちの誇りです」

 

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「BIO SPHERE」(バイオスフィア・自然環境保護に貢献します)

 

 私たちはこの世に生を受けたからには「楽しく」生きたいものです。私たちは「楽しく」とは、単におかしく楽しくということではなく、「生きがい」や「よろこび」を感じられる人生を過ごしたいと考えます。人生において、その多くの時間を会社で過ごすことになるので、会社において「やりがい」を感じられることが人生の「生きがい」に直結します。人はいろいろなことで「やりがい」を感じることが出来ますが、当社では人と同じ事をするのではなく、自分達にしかできないことを「創造」することにこそ「やりがい」があると考えます。それは新しい製品であったり、新しいサービスであったりします。元々当社はウエットスーツ作りから始まった会社ですので、近視眼的には新しいウエットスーツを作ることを目標としますが、私たちは単にウエットスーツに留まることなく、幅広くかつ奥深い「新しい生活文化」を創造することに、自分達の喜びを見出したいと考えます。

しかし、それは決して独りよがりのものであってはならず、誰かの役に立つものでなければなりません。自分達が創造したものが人様のお役に立ち、社会に貢献できることこそが私たちの「生きがい」なのです。

創造を通して、やりがいのある会社、楽しい会社、社員満足度の高い会社作りを目指します。そして品質に拘り顧客満足度の高い会社作りを目指します。社員満足なくして顧客満足はなく、また顧客満足なくして社員満足は有り得ません。会社は社員とその家族の幸福を第一に考え、第二にお客様への貢献、そして地域社会や株主様に利益を還元してまいります。

また、私たちは大自然である海を舞台にした生活文化を通してこれまで恩恵を受けてきました。そのため、私たちは自然との共生を目指します。地球は無数の小さな生命の連鎖からなるひとつの球形の生命体と言うことができます。私たちはこれをBIO SPHERE(バイオスフィア)と呼びます。私たちに多くの感動と喜びを与えてくれる大自然・バイオスフィアが永続することを願い、私たちは事業を通じて自然環境の保護に貢献してまいります。

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Vol.3 「ドライスーツのパイオニア的存在」

オニール社は当時、サンフランシスコに大きな工場を持ちウエットスーツを作っていました。その後メキシコに工場を移し、さらに今ではSHEICOなど東南アジアで生産を委託しています。ちなみに2008年の、まさにリーマンショック直前にオランダの富豪がオニール・ブランドを高額で買収したのです。その金額は当時の相場で560億円!そして、その年はウエットスーツ業界がもっとも良かった時期でした。ですから、このオーナーは最高値でオニール・ブランドを買ったので今では貧乏しているのではないかと勝手に心配したのですが、今でもオランダの最も金持ちの一人なのだそうです。

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オニールはSHEICOに生産委託する前に、一時韓国のボドラックという会社に生産委託をしていた時期があります。ここには当社も少し生産委託をしており、会社の主要メンバーとは親しくしていました。しかし、オニールが離れ、会社が回らなくなり倒産してしまいました。その時、営業の担当をしていた役員が、その会社を引き取り再建しました。その人は朴さんと言い、1996年に当社とライセンス契約を締結しMOBBY’S KOREA(現 HYPER)となり韓国でMOBBY’Sブランドの製品を製造販売しています。

 

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1989年のドイツでの展示会の後、次々にスウェーデン、イタリア、ドイツの会社が代理店となりMOBBY’Sのダイビングドライスーツを販売し始めてくれました。ドライスーツの発祥は,水温が低く海底油田開発が活発だった北欧であり、プロダイバードライスーツメーカーのViking, Poseidonが有名でした。また英国にもTYHOONなどいくつかのメーカーが先行していました。しかし、その頃に欧州には高品質でデザイン性の高いレジャーダイビング用のドライスーツはあまり無かったので、MOBBY’Sはその分野のパイオニア的な存在となり、MOBBY’Sのブランドは欧州業界にしっかり浸透したのでした。その原動力となったのは独自のツインシェル構造(国際特許)とそれが可能にしたカラフルなデザインをドライスーツに取り入れたことでした。スウェーデンの代理店は何度も石巻に来て交流を深め、ドライスーツに関する知識も色々と教えましたが相手に資金の問題があって2000年に契約を解消しました。その後に彼らが共同出資者を招いて再建したのがWater Proof社で今では欧州で指折りのウエット、ドライメーカーです。イタリアでは(以後つづく)

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